中国を代表する銘茶、中でも希少性の高い黄茶の蒙頂黄芽です。一般的に黄茶は独特の風味が強いものが多く好みが分かれますが、この蒙頂黄芽は誰もが美味しいと思うような品格のある黄茶に仕上がっています。非常に高い技術で作られた、まさに現代の貢茶(皇帝献上茶)です。 このお茶の産地である蒙頂山(蒙山)は世界で最初に茶樹の人工栽培がおこなわれた場所です。その歴史からも分かるように、この蒙頂山でとれる上質なお茶は唐代から清代末まで皇帝献上茶として、その名を馳せてきました。特に黄茶は清代皇帝が愛飲したことでも知られています。 この蒙頂黄芽は蒙頂山主峰の標高1200m付近で栽培されている茶樹を2020年3月26日に摘み取り、手工、機械を使わずに全て手作りで丁寧に製茶されています。 こちらが以前訪問した際に撮影した蒙頂黄芽の茶畑です。味わいの深さ、美味しさは、平地茶と違います。珍しい黄茶というだけでなく、心が震えるように美味しいお茶に仕上がっています。 黄茶の特徴は悶黄(もんおう・メンファン)という工程にあります。悶黄とは摘み取った茶葉が酸化発酵しないように加熱(殺青)した後に、まだ茶葉が熱を帯びている状態で紙に包む、木箱に入れるなどをして、茶葉自体の持つ熱と水分で数時間から数十時間蒸らすというものです。これにより高湿度高温の環境下に茶葉がおかれることととなり、茶葉の持つポリフェノールを中心とする成分が非酵素的に酸化します。蒸らし方やその回数は作られる黄茶の種類によって異なり、蒙頂黄芽の場合は和紙で少量ずつ包んで行います。 黄茶の旨みや美味しさは悶黄によるものが大きいのですが、それだけがこの美味しさを作っている訳ではありません。 黄茶独特の製造方法を守りながら、更に改良を重ねて作られたのが、この蒙頂黄芽です。この蒙頂黄芽の作り手さんは農閑期には大学で製茶について学生に指導を行うような、とても研究熱心で真面目な方です。常により美味しく、安心して楽しめるお茶づくりを目指している中で、この蒙頂黄芽は作りだされました。 芯芽のみで構成された艶のある茶葉です。白毫が白く差し込んでいて美しいアクセントになっています。白毫というのは茶葉の先端についている芯芽のことで、紅茶ではシルバーチップなどと呼ばれる希少な芽の先端部分です。緑茶では一般的に白毫が多い方が良いとされ、この先端部分は甘さや柔らかさ、旨みなどを多く持っています。 お茶の香りを楽しむためにガラス茶器(耐熱グラス・ポット)や蓋碗をお勧めします。現地では耐熱ガラスのグラスを使って美しい茶葉を眺めながら楽しみます。 一般的に黄茶も緑茶と同様に低い湯温で楽しむとされていますが、この作り手の緑茶は非常に品質が高く、高温で淹れても雑味がありません。低温から高温までお好みの湯温で楽しむことができます。 香ばしい火香と甘い花香を感じます。香ばしさの中にしっかりとした甘味、複雑なミネラル感が合わさって独特の味わいに仕上がっています。煎持ちも非常に良いお茶です。 飲み終わった後の茶殻も是非お楽しみください。中国茶では飲み終えた後の茶葉を鑑賞して楽しみます。黄緑色の柔らかく、ふっくらと肥えた芯芽は宝石のような美しさです。 |