最高品質の紅茶として有名な金駿眉を最初に作り出した1人という、とても技術の高い作り手による伝統的な製法、品種を守って作られた正山小种(正山小種)です。品格を感じる松烟香と桂圓(龍眼)を連想させる正当な正山小種です。なによりお茶としての旨味、滋味、ミネラル感が素晴らしく、10年以上の歳月を経たことで、より深みのある紅茶に仕上がっています。 最近では伝統的な、馬尾松を使って作る正山小種はほとんど見られなくなりました。「正山」と名乗ることのできる産地、桐木は自然保護区に指定され、外部からの訪問者の立ち入りすら厳しく管理されています。(入り口にゲートがあり、そこで厳しく訪問者をチェックしています。招待状がないと訪問できません。)無許可での樹木の伐採は許されていないため、製茶の際に必要となる馬尾松を外部から持ち込む必要があります。また、松烟香が現在の中国国内では、あまり好まれないということもあり、今ではほとんど作られなくなってしまいました。 現在、中国国内をはじめ、日本でも流通している「正山小種」のほとんどは桐木で作られた紅茶ではなく、それ以外の地域で作られた外山小種です。作られる地域が違うというだけでなく、使用される鮮葉の品種や製法も異なります。 通常、正山小種の殆どは古来から桐木にある在来の茶樹(桐木奇种)と中葉種の水仙の両方をブレンドして作られています。これは在来種の採取量が少ないということ、非常に繊細な味わいの品種で在来種のみで作られた紅茶は味わいの深みを出すことが難しいという理由です。
青楼と呼ばれる建物で伝統的な正山小種はつくられます。 2階は熱源に近いことから乾燥工程で使用されます。その際に正山小種特有の松烟香がうまれます。2階は茶葉の状態によって乾燥や香り付けに使われることもありますが、熱源から離れることから、それほど高温を必要としない萎凋工程で主に利用されます。 流通している「正山小種」やラプサンスーチョンのほとんどは先に挙げたように「外山小種」です。これらは産地や品種が違うだけでなく、製法も異なります。青楼を使った製茶ではなく、小葉種の鮮葉から作った紅茶に松の木で燻製したフレーバーティーといっても良いものです。伝統製法による正山小種は萎凋工程から自然と馬尾松による香りを含むよう製茶されています。そのため、強い香りを持つ「正山小種」をお好みになる場合はおすすめできません。 長年懇意にしている作り手さんでは、現在、伝統製法の正山小種は製茶していません。現地作り手さんや友人たちに紹介された製茶場など、何年か探してはいるものの、価格と味わい、香りのバランスが取れず、なによりお茶として美味しいとおすすめできる正山小種に出会えず、ご紹介できずにおりました。今回、その作り手さんが大事に手入れしながら保管していた2012年の正山小種を譲っていただけることになり、ご紹介することができました。 上質な紅茶は年月を経ることで、より味わい深くなります。心地よい松烟香と桂圓湯(龍眼の薬膳スープ)のような優しく奥行きのある滋味が沁み入るような正山小種です。 2012年春茶 |