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正山小種の産地 武夷山桐木訪問

2013年10月10日 category : BLOG, お茶の旅 

龍鳳谷景区

武夷山の茶産地訪問の最後は正山小種の産地、桐木村を訪問しました。

桐木村は武夷山星村鎮桐木関と呼ばれる地名ですが、実際は岩茶を作っている「武夷山」からは5~60キロ離れた場所にあります。片道車で2時間はかかる場所で、九曲渓の遥か上流に位置しています。
この地域は国家級自然保護地区に指定され、数年前から外国人の立ち入りが禁止されています。中国人は保護地区内から招待があれば入ることができます。手前にある龍鳳谷景区までは誰でも行くことができますが、その先の桐木関へはゲートがあり招待の有無と身分証明書のチェックがあります。今回、私たちがお世話になっている作り手さんのご好意で特別に招待していただきました。もちろん、外国人であることは周囲に秘密の訪問です。

ゲートの中には小規模の昔ながらの製茶場から近代的な工場などが急勾配の山道沿いにポツポツと建っていました。私たちがお世話になっている作り手さんはその中でもかなり標高の高い場所に製茶場を持っているため、更に山道を車で登っていきます。

ゲートを過ぎてすぐの頃は道沿いの茶畑も急傾斜ではあるものの、私たちの良く知っている「茶畑」といった感じが多く続いています。これらの半分近くは水仙種の茶樹です。
通常、正山小種の殆どは古来から桐木にある在来の茶樹(桐木奇种と呼ばれていましたが実際には複数の名称で呼ばれる様です)と中葉種の水仙の両方をブレンドして作られています。これは在来種の採取量が少なく、非常に繊細な味わいの品種のため、在来種のみで作られた紅茶は味わいの深みを出すことが難しいという理由です。

桐木 正山小種茶畑

ようやく目的の作り手さんの製茶場に到着しました。標高1000mを越える場所で、先ほどまで真夏のように暑かったのが嘘のように寒いと感じるほどの気温です。
製茶場の周囲は茶畑に囲まれていますが、茶畑といっても写真の様な状態です。シュロの根元に生えている背の低い植物が茶樹で、全て在来種になります。樹齢100年は軽く越えているだろうとのことでした。元々、遥か昔からこの地にあった茶畑で、詳細は分からないとのことでした。農薬は当然ながら肥料すら与えていないそうです。

審評室

まずは製茶場の審評室で今年の正山小種、妃子笑、金駿眉などの評茶をさせていただきました。

この作り手さんは金駿眉の製法を作り出したメンバーのお一人で、日本でも中国茶の書籍で紹介されていることもあるような方です。とても品質には厳しく、お茶の審評は欠かせません。オランダ王室をはじめ、ヨーロッパ王室向けの正山小種を任されていて、壁にはEUをはじめとした各国の有機認証の証書が飾られています。
普通ならこんな親しくさせていただくことはもちろん、お話させていただくのも難しいような方なのですが本当に良くしていただいています。この日は試作中の新しい製法で作られた紅茶も試飲させていただきました。

正山小種工場

数時間、たくさんのお茶をいただき、色々なお話をさせていただいた後は製茶場を見せていただきました。

この建物は正山小種ではスタンダードなものです。
少し地面を掘り下げて作られている1階部分に窯があります。写真では薪が積み上げられている所の丁度後ろの部分です。その窯で松材の薪を使って火を炊きます。植物の伐採が禁止されているこの地域では薪となる松の伐採も禁止されているため、薪は全て保護地区外から運んでくるそうです。
その上、人が休憩している後ろで茶葉を燻します。製茶の工程にあわせて必要とする温度が変わります。そのため茶葉は工程によって2階、3階と移動していきます。内部の床は薪を燃やした煙が上りやすいように板を渡しただけのような簡素な作りになっています。

正山小種工場

ちょうど訪れた日にも製茶を行っていました。製茶場にある小さな扉を開けると煙が充満している中に茶葉があります。まさにモルトウィスキーでいうところのフロアモルティングです。外からの光が届く範囲以外は真っ暗で何も見えません。その上、内部は長年の製茶によって煤で真っ黒になっています。

この茶葉はこの地で摘み取られたものですが、実際には桐木以外の地で摘み取られた茶葉を持ち込み、桐木の正山小種として流通するケースが多いそうです。実際、桐木は険しい山間にひっそりとあるような場所で、決して茶畑が作りやすいとは言えません。また、自然保護地区に指定されてからは既にある茶畑以外、新たに茶畑を作ることは禁止されています。そのような事情もあって生産量を増やすことは難しいようです。

この地で育った在来種のみを使った正山小種はとても優しく柔らかいお茶です。私たちが普段知っている正山小種とは全く違う繊細な味わいと香りで、同じ「正山小種」とは思えません。


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伝統 正山小種

この作り手さんが作った正山小種です。
通常、正山小種の殆どは古来から桐木にある在来種と中葉種の水仙の両方をブレンドして作られています。これは在来種の採取量が少ないということ、非常に繊細な味わいの品種で在来種のみで作られた紅茶は味わいの深みを出すことが難しいという理由です。
この正山小種は桐木の中でも標高1000mを越える地域に昔からある樹齢100年を越える在来種からのみ作られています。通常であれば繊細すぎる味わいに仕上がってしまうことが多々ありますが、名人ともいえる作り手の技術で繊細さを持ちながら非常に上品で滋味深い紅茶になっています。

また、正山小種と言えば独特の焙煎香が挙げられますが、輸出用には追加焙煎を行って非常に強い香りをつけています。そのような追加焙煎を行わない中国国内流通用の上質な正山小種でも出荷先地域によって香り付けの程度が異なります。華北方面は強めに、華南方面は弱めにというように調節されていますが、この正山小種はそのような調節を行わないこの地域本来の香りで仕上げています。

中国国内流通向けの伝統的製法の味わいの濃い正山小種もございます。
(在来種・水仙種使用)
正山小種

また、使用品種の違いを比較しやすいお得なセットもご用意しました。
正山小種 テイスティングセット

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金駿眉

価格が上昇しすぎてしまって入荷する予定はなかったのですが、今回は少量ですが入荷しました。
これは金駿眉を最初に作り出した作り手の1人から譲り受けたもので、生産地の桐木の中でも標高1200m以上の高地で採取した樹齢100年を超える野生茶樹の茶葉から作られたものです。
本物の金駿眉を飲んでみたいという方からのお問い合わせが多く、今回、作り手が保管していた分を少量分けていただきました。作出した本人自ら製茶したオリジナルの金駿眉です。


10月27日から11月21日、11月23日から11月30日までのあいだ、中国および台湾へ出張・研修のため、発送業務をお休みさせていただきます。
かなり長期に渡るお休みとなります。ご迷惑、ご不便をおかけして申し訳ありません。

10月25日21時までにクレジットカード・代金引換によるお支払い方法をお選びいただいたご注文、銀行振込やゆうちょ銀行送金などのお支払い方法をお選びいただいた場合は同じく10月25日中に入金確認ができたご注文を10月26日に発送させていただきます。それ以降のご注文は11月22日または12月1日以降の発送となります。

11月は発送可能日が22日のみとなっております。ご注文が集中した場合は22日に発送できない場合もございます。その場合はメールにてご連絡、ご相談させていただきます。

発送業務をお休みさせていただいている期間も、ご注文は変わらずお受けいたしておりますが、ご注文確認のメールやお問い合わせの返信メールなどにいつもより少しお時間をいただく場合がございます。ネット接続環境が不明な場所へも行くことを予定しておりますため、ご返信などに最長で5日程度のお時間をいただくことも予想されます。

ご不便をおかけしますが、どうぞご了承いただけますようお願いいたします。