大紅袍は岩茶の中でも非常に有名な品種ですが、もともとは武夷山の九龙窠景区の岩肌に生える6本の茶樹からつくられた武夷岩茶を指します。これらの茶樹は母樹大紅袍と呼ばれ、自然遺産ともされているため一般に流通することはありません。一般的に流通している大紅袍は商品大紅袍と呼ばれるブレンド茶です。
ながく、母樹大紅袍は3つの品種で構成されていると思われてきました。その品種は奇丹、北斗、雀舌ですが、近年の遺伝子検査の結果、そのうちの北斗は母樹大紅袍の構成品種ではないことがわかりました。その北斗と思われていた品種は不明ですが、地元の茶農家さんたちは56号と呼んでいます。(正式な品種名称ではありません。) 今回ご紹介する大紅袍は母樹大紅袍から挿木した3代目、その「56号」を水簾洞景区で大切に栽培した純種大紅袍です。この純種大紅袍は特別なお茶として、機械を使わず、作り手が全て手で製茶しています。
岩茶はその茶樹が武夷山のどこで栽培されたかで区別されます。武夷山風景区内の標高の高い地域にある岩山の自然環境で育てられて収穫された茶葉は正岩茶と呼ばれ、標高の低い地域のものは半岩茶(現在は標高に関わらず自然保護地区内で栽培されたものは全て正岩茶としていることが殆どのようですが当店では昔と同様の区分けを行い、標高の低い地域の「正岩茶」は取り扱いません)、武夷山の麓、平地で栽培されたものは州茶とされ、全く異なる地域で作られたものは外山茶と呼ばれます。これは育った環境の違いがお茶の香りと味に大きく影響するためで、岩茶本来のミネラル感や旨み、香気といった岩韻は正岩茶以外にはありません。不思議なようですが同じ岩茶でも正岩茶と半岩茶、州茶では全く味も香りも異なります。 これぞ大紅袍といった品格の高さを感じる岩茶です。本物の正岩茶のみが持つ、喉を過ぎてから戻ってくる香り、余韻が素晴らしく、しっとりとした高い花香、深みのある底知れぬ滋味が体に沁みるように広がります。多くは語りたくないと思うほど、奥深い大紅袍です。 ティーポットで、中国式であれば茶壷や蓋碗で淹れてみてください。 煎持ちも非常に良く、上手く淹れれば10煎以上楽しむことができます。緑茶と違い、「宵越しのお茶」もできます。十分にお湯を切って涼しい場所で茶壷ごと保存すれば、翌日もその続きを楽しめます。次の日に再度お茶を淹れる際には熱湯で軽く1回洗茶してからお楽しみください。時間が経過しすぎて、室温が高すぎたなどの理由で茶葉が変質してしまった場合は飲用を中止してください。 十分に楽しんだ後は茶殻も鑑賞してみてください。中国茶では茶殻の形も楽しみます。 2018年の春に製茶された岩茶です。年月を経ていくことで旨み、甘味、香りの深さが増してくるお茶です。その変化もお楽しみいただければと思います。 関連ブログ: |